炭水化物の摂取量を減らして、他の栄養素の摂取量を増やすという「低炭水化物ダイエット」が、2型糖尿病患者の死亡リスクを低下させる可能性があると報告されました。これは、Diabetes Care 4月号に掲載されたもので、その内容を以下に要約いたします。

米国内の看護師を対象に実施されている「Nurses' Health Study;NHS」と、医療従事者対象の「Health Professionals Follow-up Study;HPFS」という二つの大規模コホート研究のデータを用いて、低炭水化物ダイエットと生命予後との関連が調査されました。これは、約34年間(13万9,407人)に渡る追跡で、1万101人(NHSで女性7,224人、HPFSで男性2,877人)が2型糖尿病を発症し、そのうち4,595人の死亡が記録されていました。

研究参加者の食事スタイルに関しては、数年おきに実施された食事調査に基づき炭水化物摂取状況をいくつかの指標で評価されました。

それらの指標は、
炭水化物の総摂取量が少ないほどスコアが高いというもの(total low-carbohydrate score;TLCDS)。
動物性食品中心の食事スタイルか(animal low-carbohydrate score;ALCDS)、
植物性食品中心の食事スタイルか(vegetable low-carbohydrate score;VLCDS)等によって、
低炭水化物ダイエットの質を評価するものです。

低炭水化物ダイエットの評価結果と死亡リスクとの関連を解析すると、炭水化物総摂取量が少ない人の方が、死亡リスクの低いことが分かりました。
ただし、低炭水化物ダイエットの質の評価結果との関連を見ると、動物性食品中心の低炭水化物ダイエットをしている人では、有意な死亡リスクの低下が認められませんでした。具体的には、
TLCDSが10点高い場合の全死亡リスクのハザード比 HR は、0.87(95%信頼区間0.82~0.92)、
VLCDSが10点高い場合には、HR 0.76(同0.71~0.82)と、共に有意な結果であるのに対し、
ALCDSが10点高い場合には、HR 0.95(同0.90~1.00)と、非有意な結果でした。

この研究結果は、2型糖尿病の管理のために炭水化物の摂取を制限するという現行の推奨事項を支持するもので、低炭水化物ダイエットによる健康上のメリットの評価は、栄養素や食品のバランスが重要だと示唆されています。

以上要約。

近年、低炭水化物ダイエットの減量および血糖改善効果が注目されています。低炭水化物ダイエットは、ケトン体産生を目的とする厳格な糖質制限「ケトジェニック」と比較すると負担なく続けやすいものです。ただし、今回の研究では、TLCDS上位20%の人の摂取エネルギー量に占める炭水化物の割合は、約40%だったこともあり、この約40%という割合は、厳密な低炭水化物ダイエットより多いもので、糖尿病患者は炭水化物の摂取量に注意する必要があることは確かですが、栄養面で優れている植物性食品を十分に摂取する為には、制限を緩やかにする事も重要です。今後、S2 Medical Workoutの食事バランスガイドの改訂にも、参考にしていきたいと思います。

 

Text  /  齊藤 海之(S2 Medical Workout)