劇的な体重減少をもたらす奇跡の薬として、近年、とある薬剤への関心が高まっています。

「オゼンピック」「ウゴービ」「セマグルチド」これらの用語の検索数が、年々増加傾向にあり、特に、週1回の注射で容易に減量が可能だと評される「セマグルチド」の登場は、世間で大きな注目を集めました。この「セマグルチド」には、レプチンの働きを補強する効果があり、これにより、食欲の抑制と血糖値の低下を促し、体重の減少が期待できます。この「セマグルチド」は、本来、2型糖尿病患者へ投与されるべき薬ですが、メディカルスパなどの施設やオンライン等で入手するのが容易な為、医療機関で、使用基準に満たない診断を受けた方々が、これらの方法で入手しています。某美容系インフルエンサーが、この「セマグルチド」の不適切な使用により、身体にに不調を起こした事例があったようで、本来の症状以外での「セマグルチド」の使用は、様々な副作用を引き起こす可能性があり、想定外の危険を伴いますので、要注意です。ただ、診断基準(2型糖尿病)を満した人が利用すれば、劇的な体重減少をもたらす(奇跡のダイエット)薬といえます。注意して欲しいのは、非正規の場所で、処方されているこの薬は、アメリカ食品医薬品局(FDA)が承認しているモノとは異なるという事です。

日本では、「セマグルチド」を、2 型糖尿病患者における良好な血糖コントロールの達成に効果的な薬剤として承認していますが、肥満治療薬としては、正式に承認されていません。しかし、医師の判断で、本来の用途以外の人に処方されるケースが増加しています。これは、「適応外治療」と称されるものですが、安全性や効果が十分に検証されていない事から、懸念も高まっています。更にアメリカでは、近年「調剤セマグルチド」と呼ばれる新たな問題が浮上しています。この「調剤セマグルチド」は、「セマグルチド」にビタミン等の成分を添加した医薬品で、主に、メディカルスパやオンライン診療サービスで処方されています。調剤医薬品は、市販されている医薬品と比較して規制が緩やかであり、安全性や、有効性の評価が不十分である恐れがあります。服用を中止した途端に、体重があっという間に増加したケースも報告されていますし、何より薬の長期的な使用による依存症のリスクも十分考えられます。

これらの背景を基に、私の個人的な見解を述べます。「セマグルチド」は、本来の用途で使用した場合、効果的な治療薬となり得ます。しかし、「適応外治療」や「調剤セマグルチド」に関しては、いまだに多くの懸念点が存在しますので、医師の診断を受け、正規のルールで薬剤を処方してもらって下さい。これらの治療薬は(多くの場合が保険適用外である為)高額な薬剤です。高い費用をかける前に、まずは、専門家によるカウンセリングを受け、食事療法や運動療法など、薬剤に頼らない減量方法の可能性を模索しましょう。また、医師や我々トレーナーと共に、生活習慣の改善や栄養指導など、非薬物治療も含めた治療(減量)計画を立て、総合的にアプローチをする事が、リバウンドのないダイエットへの最善の方法だと感じています。

Text  /  齊藤 海之(S2 Medical Workout)